楽器不可の物件にお住まいの方へ

楽器不可の物件にお住まいの方は、契約上「演奏不可」です。絶対に部屋の中で吹いてはいけません。防音室を設置してもダメですし、そもそも「造作物」として違反を指摘されます。トラブルが起きた場合は退去になりますから、注意してください。

楽器を演奏してよい住環境とは

フルートを始めるにあたり、あなたのお住まいが音を出しても大丈夫かどうかという判断。さて、どういう基準で考えたらいいでしょうか。

経験者の方なら、過去いろいろお悩みになったこともあるかもしれません。しかし、いつどこでトラブルが起きたのか、そのきっかけから探ると、その謎が解けます。
いままで自分の家で音を出したことがない方は、このコラムを通して「迷惑にならない方法」をぜひ知っていただければと思います。また、すでにトラブルでお悩みの方も、ここでぜひ解決してください。

まずは私の実家の練習環境、時代背景についてちょっと触れてみます。

新興住宅地の実家には40年いましたが、開発入居時の時代背景はまだまだ近所の結びつきが強い時代で、近隣への相互の配慮というものは大変強いものがありました。

始めた当時は小学生でしたから、夕食前には練習を終えていたこと、隣が空き地だったこともあって、練習が騒音というトラブルは一切ありませんでした。その後、受験を控え夜10時半まで音を出しても、苦情が寄せられることは一度足りもなかったのです。

ただ、正直言うと、いわゆる昭和の作りの木造住宅で、断熱材のない壁でしたから、夏は暑く冬は寒い。防音効果もないため、結構内外の音は筒抜けだったものです。

音大には練習室があったため、家で音を出すことは激減。卒業すると、ライブハウスやスタジオで音を出すことが多くなり、楽器の騒音トラブルとは無縁の生活を送っていました。

<ここでのポイント>

・近隣への配慮があった時代
・隣が空き地だった
・のちにほとんど家で吹かなくなった

2008年、家庭を持ち独立します。諸事情で「楽器不可」の物件に住むことになりましたが、すでに教室を営んでおり、スタジオで練習することが可能だったため、不自由は感じませんでした。ただし、隣人の騒音トラブルがひどく(これについては別のコラムで触れます)2年足らずで転居。

その後、楽器OKの物件に移りますが、ここから賃貸契約の盲点、問題点を山ほど知ることになりました。個別のトラブルの詳細は別のコラムに譲るとして、ここでは実際のトラブルから学んだ正しい情報と知識をお伝えしたいと思います。

 

まず、時代は大きく変わり、近隣への相互の配慮は激減して自分勝手な時代になりました。注意に逆切れされ、警察や裁判にまで行く時代です。

時代背景を示すものに、こんな歌詞があります。

「真夜中のボリュームに大家が怒りだす」
「床板はうすいから隣りもどなり返す」

1987年 大江千里「STELLA’S COUGH」より

ちょうど私が大学に入ったころのもので、まあこんなやり取りもまだまだ許された時代ということです。いまこんなことをしたらすぐに大騒動になります。

2010年、楽器OKで契約したはずの物件で、練習中に隣人から壁を激しく叩かれました。当初は話し合いで一旦落ち着いたのですが、経緯を伝えた不動産がその後何も動いてくれず、結果的にはこちらの違反を指摘されることに・・・???それは、その部屋でレッスンをしていたから。

個人レッスンであっても、営業活動。商用契約が必要と言われました。これは確かにこちらのミスです。しかし、腑に落ちなかったのが、トラブルを何度も相談したのに1年近く放置された末、契約違反と言われたこと。最終的には対応が不満で転居することになりましたが、ここで多くのことを学びました。

<ここでのポイント>

・「楽器OK」の住まいは完全防音とは限らない。物件相談時に細かく聞き出すこと
・壁が薄い部屋もある上、大家の口癖は「常識の範囲内でお願いします」だった
・壁を叩いた非は隣人にあるが、薄い壁の部屋で吹いた当方は「常識の範囲内」ではなかった
・マナー違反よりも契約違反のほうが立場が悪い

その後は原則「鉄筋コンクリート造」「上層角部屋」を求め、今の住まいに至ります。
さらには自前の防音室を設置し、練習時は扉を閉めて演奏しています。

 

現代は核家族化、団地・マンション住まいが多い時代ですので、隣近所の交流は激減しました。戸建てに住んでも、相互の家族のことを知っているケースが少なくなったから、孤独死なんて言葉も生まれてしまいました。

互いを知らないから疑心暗鬼になり、音への許容範囲が狭まります。子供が駆け回ったり騒いだり、掃除機や洗濯機の音だけで叩き返されたり、管理人にクレームを入れられたりします。楽器の練習の音だけで怒鳴り込まれるケースは増えつつあります。

こうなると、演奏する側が完全防御、という考え方にならざるを得ません。
分譲マンションであっても、管理室から音漏れに対するマナー掲示が出てしまうのですから、出す側の配慮が最大限に求められています。

賃貸物件で、トラブルを未然に防ぐ契約をするためにはどうしたらいいでしょう。
私の経験ではこんなことが挙げられます。ぜひ参考にしてください。

・必須条件は「鉄筋コンクリート造」のマンション。アパートは楽器OKでも必ずトラブルになる。マンションでもRC鉄骨造りは壁が薄いのでアウト
・楽器OK物件のオーナー=音楽に詳しいわけではない。音漏れが少ない造りを狙うという契約側の考え方が必要
・楽器不可なのにこっそり練習すると、トラブルが起きた時契約違反で解約される。そのため、必ず「楽器OK」「楽器相談」の物件を求める
・OKでも、管理規約の禁止事項に楽器が記されていないか、絶対に確認する。契約時に「ピアノ不可」にチェックが入ってたら必ず指摘する
・防音室の導入は、むしろ歓迎されることが多いので、検討してみる。ただし「造作物」に当たると指摘されると契約違反になるので注意
・アパートは防音室が「重量物」になるため、導入できないことが多い。ピアノOKでも防音室不可という謎の規定が見られるが、オーナーや不動産の知識不足と闘ってもしこりを残すだけだから素直に撤退。

管理規約は落とし穴です。OKで入居しても、記載を確認していないと結局音を出せなくなります。

「楽器OK」は規約確認。防音室は「造作物」にならないか確認。これがポイントです。
そして「常識の範囲内」とは、起床から就寝までの間で、20時以降は不可とされることが多いようです。防音室でも若干の音漏れはありますから、配慮しましょう。これは分譲マンションでも同じです。

戸建住宅でも、隣家に配慮して、窓際では吹かない、防音対策をするなどの配慮は必要です。もちろん「常識の範囲内」での音出しも求められます。20時以降は自粛が必要かもしれません。

音漏れの目安は「車の音がはっきり聞こえるなら、楽器の音は漏れる」です。